ボロディン: 歌劇「イーゴリ公」より「ポロヴェツ人(だったん人)の娘の踊り」と「ポロヴェツ人(だったん人)の踊り」、カリンニコフ: 交響曲第1番、ラフマニノフ: 交響的舞曲
オーケストラ・ダヴァーイ 第7回演奏会
今回のプログラムは、その知名度やそれらが持つロシア的な特徴からロシア音楽の王道とも言うべき作品で構成されます。
最初に演奏するのはボロディンのオペラ「イーゴリ公」から「ポロヴェツ人の娘の踊り」と「ポロヴェツ人の踊り」です。このオペラは中世ロシアの史実に基づいた叙事詩「イーゴリ戦記」を題材にしています。敵対するポロヴェツ人を制圧するために出征したイーゴリ公が戦いに敗れて捕虜になり、その後脱走して無事に帰還するまでが綴られています。今回演奏する2曲は、囚われの身となってなお威厳を保つイーゴリ公に心打たれたポロヴェツの将が彼に敬意を表し、客人としてもてなすために設けられた宴席での踊りの音楽です。異国情緒に満ちた美しい旋律やポロヴェツ人の荒々しく勇壮な踊りなどが魅力的に描かれています。イーゴリ公の後の時代に東から攻めてきたモンゴルがポロヴェツとルーシを占領して支配下におき、いわゆる“タタールのくびき”と言われる時代となりますが、我が国で昔から馴染みのある「だったん人~」というタイトルはこれらの曲が日本に入って来たときに、このタタールとポロヴェツを混同してつけられたとも言われます。
「ポロヴェツ人(だったん人)の踊り」のバレエの動画です。
2曲目は夭折した天才作曲家カリンニコフの交響曲第1番です。チャイコフスキーにも匹敵する天才的メロディーメーカーによる美しい旋律群と色彩的な管弦楽法を駆使したロシア的ノスタルジーと熱狂に満ちた曲で、聴けば琴線を直接かき鳴らされること間違いなしです。少し前までは「ロシアの隠れた名曲」などと言われていましたが、もはやロシアを代表する名曲と言って良いほど知名度が上がってきました。まだご存知でない方はこの機会に是非どうぞ!
そしてメインがラフマニノフの交響的舞曲です。米原万理さんの「ロシアは今日も荒れ模様」に次のようなエピソードが紹介されていました。ショスタコーヴィチに“ロシア人の中のロシア人”と認定されるほどの典型的ロシア人であったロストロポーヴィチがソ連から亡命していた際、とあるコンサートのあとで米原さんとウォトカを飲み明かしているときに「たとえ国境を越えたとたんに逮捕されたとしても、祖国の土を踏みたい」と悲痛な表情で漏らしたそうです。
また、「亡命」して結局帰国することになったプロコフィエフは「見知らぬ土地の空気によって、私は啓発されることがない。私はロシア人だ。亡命ほど有害なことはない。」と言ったそうです。
ラフマニノフもロシア革命の混乱を避けて亡命しており、同様にロシアに対する激しい郷愁を持て、愛する祖国に帰ることを夢見ていましたが、残念ながら祖国の地を踏むことなくこの世を去りました。
少し前の映画、「ラフマニノフ ある愛の調べ」ではアメリカに亡命したラフマニノフが作曲活動が進まない焦燥感と祖国への望郷の念から精神的に不安定な状態に陥る様子が描かれていました。
交響的舞曲はそんなラフマニノフの最後の作品です。躍動するリズムとラフマニノフの真骨頂である美しいメロディーが特徴的ですが、一方でロシアへの悲痛な郷愁にも満ちています。交響曲第1番の主題をも織り込み、終楽章では死を意味するグレゴリオ聖歌「ディエス・イレ(怒りの日)」を用い、クライマックスではロシア正教のアレルヤで神への祝福を表しています。ラフマニノフ自身もこの曲を集大成と考えていたのかも知れません。
今回もこのようにロシアの魅力を存分にお伝えできるプログラムです。是非いらしてください。
また、一緒に楽しむヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバスの仲間も募集しています。
なるべく早い目にご連絡ください。